2022年の阪神タイガースは外れ1位で中大の森下翔太外野手の交渉権を獲得し2位からは4人続けて高校生を指名。即戦力の獲得ではなく育成路線を明確にした形だ。近年、阪神タイガースは高校生を積極的に指名しており、今季も湯浅、浜地、西純らが1軍で活躍した。将来性のある選手を獲得することで常勝軍団を作り上げる球団の姿勢が伺える。
そのドラフトだが、どのような仕組みになっているのかあまり知られていないのではないだろうか。ここではドラフトの仕組みについて解説したい。
ドラフト会議とは何か
ドラフト会議とはプロ野球12球団が選手を指名し、選手との入団交渉権を獲得するための新人選手獲得会議だ。
現在では幅広いプロスポーツで導入されているがプロ野球ではいち早く導入され1965年から続いている。
交渉権とは何か
ドラフト会議の目的は12球団の戦力を均衡させること。球団が選手に直接オファーが可能な場合、人気、資金力、交渉力が潤たくな球団が有利になってしまう。そうなると戦力にばらつきが出てしまい、強いチームと弱いチームの格差が年々開いてしまう悪循環が生まれることになる。どのチームが優勝するか分からない緊張感こそ、ファンは一生懸命に応援し、球界全体が盛り上がる。
そのため、1人の選手に対して交渉できる球団を公平に決める会議がドラフト会議なのである。
ドラフト会議のルールは
ドラフト会議は競技によってルールやシステムが異なるがここではプロ野球の流れを紹介する。
1.選手がプロ志願届けを提出する
球団はプロ志願届を出した選手の中から指名する選手を選ばなければならない。
プロ志願届を出せる条件は以下
- 日本国籍を保有
- 日本の中学校、高校、およびそれに値する学校に在籍した経験を持つ人
- 日本の大学、およびそれに値する団体に在籍した経験を持つ人
このうちのいずれかを満たす必要がある。(過去にプロ野球界に在籍したことのある選手は対象外となる)
2.ドラフト会議当日に球団が志願者リストから選手を選択する
指名ルールは1巡目とそれ以降で異なる。
1巡目は入札抽選となり全ての球団が欲しい選手を指名する。
その中で競合した場合に抽選を行い当選した球団が選手との交渉権を獲得することになる。テレビでよく監督がくじを引くシーンが放送されているが、それがこの抽選である。競合がなく単独で1位指名した場合にはそのまま指名選手との入団交渉となる。
過去最多は8球団が競合した野茂英雄(1989年)と小池秀郎(1990年)。野茂英雄の交渉権は近鉄(現 オリックスバファローズ)が獲得し入団。1年目から4年連続で最多勝を獲得する大活躍を見せた。1995年にはメジャーに渡り日米通算201勝を上げ殿堂入りしている。
なお、指名された選手は必ずその球団に入らなければならないわけではない。あくまで球団は交渉権を獲得しただけで、選手は希望に合わなければ入団を拒否することも可能だ。
3.抽選に外れた場合
野茂英雄の場合、8球団が競合したわけだが外れた残りの7球団はどうなるのか。
外れた場合は再度希望する選手を選択しなければならない。そこで競合すれば再度、抽選となり交渉権を獲得するまで1巡目は続く。これを外れ1位と呼ぶ。
今年、史上最年少で三冠王となった村上宗隆は2017年の外れ1位である。ちなみにこの年1位指名したのは清宮幸太郎である。
ウェーバー制とは
1巡目が終了すると2巡目以降は、ウェーバー制という仕組みに変わる。
ウェーバー制とはそのシーズンの最下位球団から順に選手を指名できるシステムである。3巡目は逆ウェーバー制が適用され1位の球団から順に選手を指名する。以降、4巡目はウェーバー制、5巡目は逆ウェーバー制という流れで交互に繰り返し、選手を指名する。
この指名順はセ・パ両リーグ12球団一括で決める。しかしシーズンの順位は各リーグそれぞれで決定しているため、どのようにして12球団の順位(並び順)を決めるのかという問題があるがそれは、その年の交流戦の成績を適用する。
2022年を例にすると交流戦はセ・リーグ55勝、パ・リーグ53勝であったため、同じ順位のチームはパ・リーグから先に指名していくことになる。つまり以下の順となる。
- 日本ハム(パ6位)
- 中日(セ6位)
- ロッテ(パ5位)
- 広島(セ5位)
- 楽天(パ4位)
- 巨人(セ4位)
- 西武(パ3位)
- 阪神(セ3位)
- ソフトバンク(パ2位)
- DeNA(セ2位)
- オリックス(パ1位)
- ヤクルト(パ1位)
※逆ウェーバー制はこの逆順
各球団が指名できる最大人数は10名、全体では120名が上限。
2022年にプロ野球志望届を提出したのは高校生154名、大学生187名の計341名であった。そこから指名されるのが最大120名、さらに1年目から1軍で活躍するとそれが、どれだけ難しいことなのかがわかる。
そういう意味で、阪神タイガースが即戦力ではなく育成重視の指名をおこなったことには納得がいく。
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